2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ブログについて

「小説家になろう」に2021年10月から毎週投稿していたショートショートを本ブログにも投稿することにしまして、2022年3月5日から毎日更新していたのですが、さすがに毎日だと簡単に追いついてしまいました。そういう訳で4月1日より「小説家になろう」の投稿…

地球温暖化とK男爵

地球温暖化を阻止するためにライフスタイルの見直しが奨励されていた。省エネ、省資源、ゴミの分別から電気自動車の活用。環境問題に熱心なK男爵はいちはやくハイブリッド車に切り替え、そして今度は電気自動車に乗り換え、広い邸宅の屋根にはソーラーパネ…

深海のセイレーン

「歌が聞こえます。誰かが海の中で歌っています。これは噂の魔女に違いありません。セイレーンが出現しました」 「どこからだ?」 「方位1-4-0からです。あっ、発射音です。魚雷が向かって来ます」 「回避」 「だめです。避け切れません」 我が海軍の誇…

マザーコンピューターと忍者

「捨て猫を拾った忍者」の続編です。 巨大な中央コンピューターの前にクナイを手にした忍者が立っていた。服のあちこちが破れ、左手からは少しずつ血が滴り落ちていた。激しい戦いがずっと続いていた。多大な犠牲を払ってようやくここまで辿り着いた。遠くで…

火星で生活するための訓練

地球以外にも生命は存在するのだろうかと人類はずっと問い続けてきた。もっとも近くにある月は長らくその対象だったが、科学技術の進展により生命を育むための環境に必要な要件が次第に明確になるにつれ、生命が存在する可能性は否定された。それからは無人…

壁の向こう側

フラットアースを支持する地球平面派は動画サイトを利用して着実に支持を延ばしていた。十年前は六人に一人が信じていたフラットアースは今や四人に一人が支持するようになっていた。彼らの信じている地球の姿は以下のようなものであった。 ・地球は北極を中…

マザーコンピューターと地球連邦総督

巨大な中央コンピューターの前に銃を手にした軍人が立っている。右手からは少しずつ血が滴り落ちている。足元には彼の部下が何人も倒れている。尊い犠牲の上にやっとここまで辿り着いた。遠くで激戦を繰り広げている人々の叫び声が聞こえて来る。ようやく人…

片想いの考古学者

ゴーギャンは『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』というタイトルの絵を描いた。私たちはいろいろなことを知っているつもりでいるが意外と何も知らないということを、この絵のタイトルは示しているように思える。真ん中の問いと最…

ショッピングモールの警備員

ショッピングモールを同僚と巡回する。警備員がいるのだと知らせることが犯罪の抑止にもつながる。事件が起きてしまった場所に駆け付けるだけが私たちの仕事ではない。それより事件が起きないように配慮することが大切であり、そのためにもできるだけ何度も…

裏切り者の魔法少女

<<エターナル・フリーダム・クラッシュ♡>> 杖に集めた生体エネルギーが追手に向かって勢いよく放出される。追手はお腹を両手で押さえながら力なく膝をついている。いつもより威力は落としてあるので命に別条はないはずだ。本来、私たちは敵味方に別れて…

ゾンビの紛れ込んだマラソン

オリンピックの代表選考を兼ねたレースが始まろうとしていた。マラソンの代表枠は三名で既に二名が確定している。今日のレースに勝てば、三人目の代表になることができる。ただしタイムが他の代表二名に比べて著しく劣る場合は取り消す場合もあると協会の重…

悪魔の憂鬱

人の行動を左右する内面での葛藤は、しばしば擬人化して表現される。欲望のおもむくままに利己的な行動に導こうとするのが悪魔であり、理性的で利他的な行動に導こうとするのが天使であるとされている。小さな子供が「僕の中で、いい方の僕と悪い方の僕が喧…

余命三か月の宇宙人

「地球の皆さん、こんにちは。私はずっと遠くの星から来ました。今までに数多の星々を駆け巡り、幾多の冒険を繰り広げて来ました。そして最後に地球に辿り着きました。最後というのは他でもありません。二千年を超える私の寿命が尽きようとしていることが医…

ワルハラの自衛官

馬に乗せられている。馬の首と騎手との間にうつ伏せにされて運ばれている。眼下には緑の大地が広がっている。谷に沿って川が流れているのが見える。家や道路を走る車がとても小さく見える。馬は空を駆けているのだ。そして馬に担がれた私は空から地上を見下…

時限爆弾

私はレッド。戦隊のリーダーを務めている。メンバーは私以外にブルー、イエロー、ピンク、グリーンの四人がいる。私たちは警察や自衛隊では対応できない危険でやっかいな事案を扱っている。互いの背を預け、何度も死地を切り抜けて来た者同士が持つ強い信頼…

捨て猫を拾った忍者

森を抜けると目的地はすぐそこだった。重要な任務だったが何とか無事に役割を果たせそうだった。背負い箱の中を気にしながら、樹上を駆け抜ける。箱の中には我が伊賀一族の命運を左右する大切なものが入っている。これを無事に本部に届けることが私に課せら…

CO2排出量

「申し訳ありませんが、あなたの今年度のCO2排出量がまもなく上限に達します。次年度までに必要な排出量をすみやかに購入してください」 電話の主はそう告げた。 「CO2排出量?」 「知らなかったのですか? 今年度から適用されています。呉田政権が公…

ガラスの中の彼女

スマートフォンに入れていたAIの彼女と会話できるというアプリは削除した。好きな食べ物や無理に選択させられたデートコースに対する評価とか、そんなことしか話題にならない。少額だがこんなものにお金を払い続けるのは無駄だと思った。「おはようござい…

伊邪那岐とオルフェウス

伊邪那岐:黄泉の国に着いて伊邪那美に一緒に帰ろうと言ったら、『私はもう黄泉の国の食べ物を食べてしまいました』って言うんだよね。これってハーデースに連れ去られたペルセポネーに似ているね。 オルフェウス:そうだね。でも、ペルセポネーは一年の半分…

ライトフライ

空高くボールが舞い上がる。こちらに向かって来る。延びるのか、手前に落ちるのかわからない。そう思っているうちにボールは最高到達点まで達し、それから重力に従って地上への落下を始める。私はもう少し後ろにいるべきだったのだ。そう思った瞬間、頭上に…

Nowhere Man

ビートルズを初めて聞いたのは中二の時だった。お小遣いを貯めて買ったレコードを二枚だけ持っていた。歌詞を見ると中学生にも理解できる簡単な英語で書かれていた。その時初めてイエスタディの二番がサドンリーで始まることを知った。友達のKに教えてあげ…

ショスタコーヴィチ交響曲第13番「バビ・ヤール」

バビ・ヤールが砲撃されたという報道を読んで、ずっと聞いていなかったこの曲を聴こうと思った。ショスタコーヴィチと言えば交響曲第五番が有名で「二十世紀にこんな素晴らしい交響曲の傑作があることを知ってうれしい」と言うような感想が寄せられるケース…

ノウハウの伝承

ノウハウを持ったベテランの高齢化が進行している。ベテランの退職と共に貴重な業務ノウハウが失われてしまうという悩みをあらゆる企業が抱えていた。状況を重く見た企業では、ベテランが暗黙知として保有している経験や知識を若い世代に引き継ごうとする試…

世界の終末

直径十五キロメートル程の巨大な隕石がメキシコのユカタン半島の近くに衝突して、恐竜は絶滅してしまったのだと言う。力学法則に従って描かれた天体の軌道が、生き物たちの精一杯の努力をあっという間に蹂躙してしまう出来事は、極めて低い確率でしか発生し…

イカ

私はイカである。天敵が多い。マグロ、カツオ等の大型魚類。マッコウクジラ、アザラシ等の海洋哺乳類。カモメ等の鳥類。みんな私を狙っている。人間も私を食べる。寿司のネタになってレーンを回っている。そこそこ美味い。飽きが来ない味と言える。いろいろ…

天の羽衣

かぐや姫は月に戻る時に迎えにやって来た天人に天の羽衣を着せられた。すると翁を不憫だと思っていた気持ちが、かぐや姫の心から消えてしまった。この衣を着た人は、思い悩むことがなくなってしまう。そして百人の天人を連れて月に戻り、不死の薬を飲み、永…

エネルギー供給問題

原子力発電。経済活動で必要なエネルギーを賄うために存在するエネルギー供給手段。火力発電よりも安価になエネルギーを供給できると言う人もいる。だが、原子力発電所は事故が起きなくても数十年で廃炉にしなければならない。それでも安価なのだろうか? 稼…

宇宙人が地球を侵略しない理由その一

分厚い雲に覆われた空に丸みを帯びた銀色の物体が浮かんでいる。そこから暖かなオレンジ色の光が照射される。その光に包まれた動物や人間は、重力に逆らって光の帯の中を静かに上昇して行く。草むらの中にいた私はじっとその光景を眺めていた。そこから先の…